バルサミコとは?ワインビネガーとの違い
イタリア料理でよく使われる『バルサミコ酢』ですが、そのトロッとした食感と、甘くて酸っぱい独特の風味と味わいで、日本でも非常に人気があります。また、同じようにイタリアのお酢で、葡萄から作られている『ワインビネガー』も、日本で広く使われるようになりました。バルサミコ酢とよく比較されるのがワインビネガーですが、両方とも「ブドウ」を原料としたお酢ですが何が違うのでしょうか?今回は、バルサミコとワインビネガーの違いと、それぞれの製法、味わいや使い方を紹介ます。
両方ともお酢なんだよね、どうやって使い分けるのかニャ
そんなアランチョには、おススメの使用方法も教えるね。
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一番大きな違いは『〇〇のさせ方』
ワインビネガーとの一番の違いは、発酵のさせ方です。
ワインビネガーとは、ブドウ果汁をアルコール発酵させ、『ワイン』にしたものに酢酸菌を加えることで発酵させたお酢のことです。一方、バルサミコはブドウ果汁を煮詰めたものを、伝統的な製法で自然発酵させたお酢のことです。これに加えて、それぞれの違いには興味深い点が数々ありますので、ここからはバルサミコとは何か?およびワインビネガーとは何か?を交えて詳しく紹介します。
そもそもバルサミコとは?
バルサミコ酢は、北イタリアのエミリア・ロマーニャ地方のモデナ地区とレッジョ地区で、『伝統的な製法』を守って作られいるお酢のことで、非常に古くから歴史があります。その味もさることながら、健康効果がある事も昔から知られており、北イタリアでは古くから消化促進のために食後に良質なバルサミコ酢を飲む伝統があります。また、中世後期にはペストの治療薬として用いられたという記録も残っています。
味わいとしては、甘酸っぱくてトロっとした、果実味たっぷりのソースのようなお酢で、葡萄の色によって、黒バルサミコと白バルサミコの二種類があります。
白バルサミコと黒バルサミコの違いについては、こちらの記事をご覧ください。
歴史
バルサミコ酢の起源は1000年以上も遡ります。当時はまだ『バルサミコ』という一般名称ではなかったものの、モデナ公国を統治していたエステ家の年代記に、ローマ教皇クレメンス2世の載冠式(1046年)の模様が記されており、そこで初めて「アチェート・プレスティージョ」(高貴な酢)という単語が登場します。この酢こそがバルサミコの起源と言われています。
神聖ローマ皇帝ハインリヒ3世は、ローマ教皇クレメンス2世の戴冠式の折に、この『高貴な酢』の最上品を所望したとの記録も残っています。
18世紀には、モデナ一帯を治めた貴族である『エステ家』が独自の製法でこの『高貴な酢』を作っていましたが、この頃から、イタリア語で『芳香がある』という意味を持つ『バルサミコ』の名称で広く知られるようになりました。しかし、バルサミコの製法は秘密とされていたため、限られた貴族だけが味わうことができ、一般人には無縁の代物でした。「アチェート・プレスティージョ」はエステ家によってのみ管理され、パリやモスクワを初めとする他の公国の国王や公爵らに贈物として贈られたほか、モデナを中心とする上流階級の専有物として伝えられており、今以上に貴重な食べ物でした。そのため、「バルサミコ酢=公爵の酢」とも言われており、各家に伝わるバルサミコ酢は私有財産や遺言状の目録にも記載され、貴族の令嬢が結婚するとき持参する最高の嫁入り道具の一つです。今でもモデナとレッジョ・エミリア地区にはその風習が残っており、バルサミコの樽は母から娘へと大切に受け継がれています。
その後、18世紀末になりナポレオンがイタリアに侵攻した際、『エステ家』はモデナの地から追われることとなり、このことがキッカケでバルサミコが商人などにいきわたり、製造方法も一般に広まりました。
現在でもバルサミコは『黒い黄金』といわれ珍重されており、1グラム当たりの単価がトリュフに次いで高い食品とさえ言われています。
バルサミコの製法
バルサミコ酢もワインビネガーも、葡萄を原料として造られます。しかし、製造方法や熟成期間に違いがあります。バルサミコ酢は、原料となるブドウの果実を圧搾し果汁を煮詰め、木の樽に詰めて長期熟成させる、伝統的な製法で造られます。
熟成の段階では、樽の材質が毎年変更されます。例えば、【オーク(ナラの木材)→クリの木材→サクラの木材→トネリコの木材→クワの木材】のような順番で、異なる木材でできた樽に移し替えながら熟成させます。
この時に、バルサミコは熟成の過程で自然蒸散して量が減っていくので、徐々に小さな樽に移し変え、さらに熟成を進めて行きます。このため、それぞれの木材の香りがバルサミコに移り香として残るため、大変複雑な香りが生まれます。樽に使う木材の種類や移し替える順番や回数でも風味が変化するため、各生産者はそれぞれ伝統を守りながらも工夫を凝らし、個々の特徴をだしています。
なお、『バルサミコ』の呼称は、モデナ地区とレッジョ地区の2つの地区で作られた物のみに与えられ、欧州連合により、類似品や偽装を防止するため、地理的表示保護(IGP)や原産地呼称保護(DOP)に指定されています。
通常のバルサミコ酢は、バット(ステンレスなどで出来たトレイ)で何時間も煮詰めて、濃縮調理した後、木製の樽で何年も(上限無く)熟成させます。この白ブドウと黒ブドウから作られたマスト(発酵前の醸造原料)は木製の樽での熟成プロセスによって、さらに酸味のトゲが取れて、深い味わい変化していきます。
黒バルサミコの場合は、ブドウの絞り汁を煮詰めたあと、一切の物質を加えることなく何年もの間、木の樽で熟成されます。この樽替え作業はリンカルツォと呼ばれ、メーカーによってオーク、カエデ、アッシュ、ロビニア、ジュニパー、栗、桜など、様々な種類の木の樽に移し替えられます
一方で白バルサミコ酢は、白ブドウのマストのみから作られ、真空(酸素なしの状態)で加熱調理するため、色が透明でクリアに保たれています。このクリアな美しさが白バルサミコの特徴ですが、メーカーによっていはオーク材の木樽で最大6年間熟成させるため、色味に若干の違いがでます。その後、白ブドウのマストは白ワインビネガーを混ぜ合わされ、最終的に白バルサミコが完成します。
なお、白バルサミコ酢の品質の違いは、白ブドウマストとホワイトワインビネガーの比率によって異なります。安価なホワイトバルサマは、白ワインビネガーの含有量が高く、グレープマストの含有量が少ないです。(酸味にトゲトゲしい感じが無くなり、粘度が低い)
熟成ランクごとの名称と違い
バルサミコ酢は熟成期間によって味わいに違いが生じます。サラッとしていて酸っぱい3~5年熟成のものから、トロっとして甘さが増す10~20年熟成や、長いものでは100年熟成バルサミコまであります。このように熟成期間が長期になればなるほど、コクと甘みが増して味わいがまろやかになります。一般的には熟成期間が長いものほど、価値が高いとされています。
また、伝統製法で作られたバルサミコは非常に高価なため、一般的な日本のスーパーでは入手できません。安価に売られているバルサミコは、工場で大量生産され、着色料や甘味料などを加えて作られているものが殆どです。伝統的な製法で作られる『本物の』バルサミコは、非常に細かい規定に沿って作られており、その製法によって3種類に分けられます。
1.アチェート・バルサミコ・ディ・モデナ・IGP
IGP(保護指定地域表示品)として細かく製法や原材料、熟成期間が定められています。熟成期間は60日以上であることが定められており、かつ3年以上の長期熟成タイプはインヴェッキアートと呼ばれます。また、バルサミコ酢IGPを作る際の原材料にも規定があります。
・葡萄の汁を煮詰めたものを80%以上使う
・残り20%はワインビネガーを混ぜて、熟成させる
・天然のカラメルならば、2%まで着色料として利用できる、など
2. コンディメント・バルサミコ
Condimentとは直訳すると『調味料』という意味です。コンディメントに分類されるバルサミコには熟成期間の規定がなく、バルサミコの風味を持った『葡萄原料のビネガー』という意味です。バルサミコの名称で売ることは出来ませんが、だからと言って品質の良し悪しは一概に言えません。コンディメントの中には、あえて長い熟成をさせているものもあります。また、イタリアの伝統的な甘味料の『サバ』もコンディメントに分類されますが、これは葡萄液を約80℃で何十時間も煮詰め、樽で熟成させて作っています。
3.アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナ・DOP
こちらはバルサミコ酢の最高峰で、DOP(原産地名称保護)に指定されます。トラディツィオナーレを生産するには最低でも12年以上の熟成が必要で、更に長期熟成タイプのストラヴェッキオは25年以上の熟成が義務付けられています。特に100年以上の熟成は大変貴重で、イタリアでは嫁入り道具に用いられています。
これらの名称を授かるには、厳しい規定と長い熟成期間の洗礼を潜り抜ける必要があり、仮にトラディツィオナーレとほぼ同じ材料や工程を経て作られているバルサミコでも、熟成期間が短いものは『トラディツィオナーレ』を名乗ったりDOP指定を受けたりすることはできません。
なお、アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレの称号を授かったバルサミコは、その証として、 モデナ地方には丸いボトル、レッジオ・エミリア地方にははチューリップ型ボトルに詰めることを協会から指定されていますので、ボトルの形状から称号を見分けることがもできるのです。
ワインビネガーとは?
ワインビネガーの製法はフランスで確立され、その後欧州各国で応用されました。ワインビネガーとは、葡萄果汁から造られる酢のことで、その語源である「ビネガー(vinaigar)」はフランス語の「ワイン(vin)」と「酸っぱい(aigar)」が組み合わさった「Vin aigar(酸っぱいワイン)」に由来します。
ワインビネガーの製法
ワインビネガーはその名の通りワインから造られます。そのためワイン同様に風味の異なる赤ワインビネガー、白ワインビネガーがあります。搾汁した葡萄果汁にワイン酵母を加え、ワインもろみを醸造します。その後、醸造したワインもろみに酢酸菌を加え、樽内の空気に触れさせながら発酵させます。伝統的にはワインビネガーにワインを継ぎ足し、熟成することを繰り返しながら長期間熟成させますが、バルサミコ酢のように自然の発酵力を利用するだけではなく、多くの場合は酵母や酢酸菌を加えて、熟成期間を短くしています。
なお、白ワインから造られる白ワインビネガー、赤ワインから造られる赤ワインビネガーは一般的ですが、製造者よってはシャンパンから造られるシャンパンビネガーやシェリー酒から造られるシェリービネガーも存在し、それぞれ独特の味わいがあります。
使用方法の違い
バルサミコ
魚料理や肉料理、サラダや料理の仕上げとしてだけでなく、アイスクリームやジェラート、パンケーキのシロップなど、広い用途で食事に取り入れられます。
熟成が若いものも、酸味が強くサラッとしているので、ドレッシングのようにして使ったり、肉料理にもとても良く合います。また、熟成年度が長いものは、トロっとした質感と甘みがあり、卵料理やアイスクリームにも使えます。もちろん肉や魚のステーキにかけても美味しいですし、特に最後の一口にかけると、味わいが変わって、満足度の高い一皿になります。
なお、熟成の若いバルサミコを煮詰めることで、トロリとしたソースに仕上げることもできます。小さいフライパンにバルサミコ酢を入れて、約半量になるまで煮詰めると、酸が蒸発して甘みが増して、トロリとしたソースができます。さらに、塩、胡椒、バター(時にはハチミツ)などを加えて煮詰めても、コクがあって美味しいソースに仕上がります。また、煮詰めたバルサミコ酢をアイスクリームにかけるだけでも絶品です。
白ワインビネガー
白ワインビネガーは、リンゴやレモンのような爽やかでフルーティな香りで、酸味もさっぱりしています。あっさりした味わいから、魚の生臭さを消す効果もあるので、魚介類にピッタリです。また、クセもないので、生野菜のサラダ、カルパッチョなどの料理にも使いやすいです。
赤ワインビネガー
白ワインビネガーよりも果実感が強く、コクが増します。また、白ワインビネガーと比べてポリフェノールを含むため、独特の渋みがあり、肉料理によく合います。肉料理に合わせやすく少量でも味わいに深みが出るのが特徴です。野菜料理の隠し味に使えば、コクと深みが出るので重宝します。また、バルサミコ酢のように火にかけて、料理のソースとしてもおいしくいただけます。
まとめ
如何だったでしょうか?バルサミコもワインビネガーも、同じように葡萄を原料としていますが、味わいが全然違います。ワインビネガーの方が、コストパフォーマンスが良く酸味も強いので、米酢の代わりに直ぐにでも代用できます。バルサミコは、黒ならばお肉や魚、トロミと甘みが強いものはデザートにもオススメです。そして白バルサミコは、サラダや白身魚に試してみると、相性よく食べられると思います。
皆さまもぜひ、自分なりの使い方を見つけてみて下さい!また、朝のサラダに、オリーブオイルと組み合わせて使ってみるのも、大変オススメです!
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