腸活のすゝめ
食べることは人間が生きていく上で欠かせません。これは喜びであり、生活の一部であり、そして生命を健康にするものでもあるし、害を与えることもあります。腸は食べたものを消化し、栄養を吸収し、残ったものを便として排出する役割を担っていますが、近年は腸のトラブルを訴える人が増えています。腸の不調により、消化不良や代謝不良を起こすのは当然として、併発する免疫力低下、鬱、癌など様々な症状が報告されています。そこで今回は、腸を綺麗にしておく『腸活』のメリットと具体的な方法を紹介します。
何を食べるかよりも、何を食べないか。食べすぎも良くないよね。
お腹いっぱいに食べた次の日は、確かに目覚めが悪いニャ。
食べ物で血が汚れると腸が汚れる。これはギリシャ時代から指摘されていたんだよ。
古代ギリシャの医学


紀元前460年頃から紀元前370年頃にギリシャの医者であった『医学の父』ヒポクラテスは2~4種類の体液を構成要素として挙げました。この考え方は後に『人間の体液は血液を基本に、粘液、黄胆汁、黒胆汁の4つから成る』とし、『血液にその他の3つの液体が混ざる事で不調をもたらす』という四体液説が発展しました。
古代ギリシャの考え方では、食べた物が消化されて養分になり、血液が生じ、細胞を作り、その結果として正常な体を作ると考えたため、食事を大変重要視しました。
漢方の考え方

ところ変わって中国に伝わる漢方でも、万病一元論という同じような考え方があります。腸の汚れが万病に繋がるという考え方で、どんなに健康に良いものを食べていても、腸が汚れていては、その汚れ(老廃物)を一緒に吸収してしまうというのです。例えば、断水した時の水道管のように、普段は水が通っているので水は透明に見えますが、断水した後から茶色い水が流れたりするのは、水道管にこびりついた水垢のような汚れがパラパラと剥がれだすからです。これと一緒で、腸の中を綺麗にすることが、大変大切だと考えられています。この作用を利用しているのが、断食療法(=ファスティング)です。
成人の腸の長さは7~9メートルと言われていますが、この長い腸管には水道管にこびりついた水垢と同じように、便として出なかった毒素・老廃物(宿便)がこびりつきます。これを定期的な断食(ファスティング)で解消することもできますし、普段からの食事法を工夫することで解消することもできます。当コラムでは、オリーブオイルをはじめとする地中海式食事法などを紹介し、普段の生活を続けながら、食事のバランスを整え、腸管を綺麗にする方法を紹介しています。
腸内環境を悪くする食事習慣

食べすぎ
腹八分目という諺が有りますが、これは腸内環境の観点からいうと正解です。むしろ、1日3食をきっちりと摂る場合は、もっと少なくても良いかもしれません。オートファジーとは、生物に備わっている細胞内の浄化・リサイクルシステムで、細胞が持つ自己貪食(自食)の機能で、主に空腹時に活発化すると言われています。このことにより、細胞内の不要・有害なもの(変性タンパク質、不良ミトコンドリア、病原性細菌など)を分解して消化してくれます。これは胃腸の不要物に限らず、体中の不要な毒素を自食してくれるという事で、老廃物の蓄積が招きうる様々な病気から人を救うのです。さらに栄養状態が悪くなった時にでも、過剰なタンパク質を分解して、生存に必要なタンパク質にリサイクルするという働きもあります。
なお、新陳代謝としてのオートファジーは、私たちの体のほとんどの細胞で、常に起こっていると考えられますが、栄養が供給されない飢餓状態に陥ったときには、特にオートファジーが活発化すると考えられています。逆に言うと、常に食べすぎの状態では、栄養過多になり、新陳代謝のためのオートファジーが行われにくくなるのです。このシステムは東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが研究し、2016年にはノーベル医学・生理学賞が贈られています。
消化酵素と代謝酵素
酵素には2種類あり、元々人体にある『体内酵素』と、外部から取り入れる『体外酵素』に分けられます。体内酵素とは生命活動に必要な代謝酵素と食物の消化をする消化酵素です。また、体外酵素は食物酵素で、これも食物を消化する消化酵素です。
私たちの身体の中で体内酵素は毎日作られていますが、作れる酵素の総量には上限があります。体内酵素の総量が100あった場合、もし消化に酵素を60使った場合は、代謝は40しか残っていないのです。そこで、大量に食べて消化酵素を使い果たしてしまったり、消化に悪いジャンクフードを食べたりすると、代謝酵素の残りがなくなり、結果として代謝不良に陥り、体内に毒素が残るという事になります。ここで重要な考え方ですが、食物の消化には食物酵素が必須ですし、消化したものを代謝するには、代謝酵素が必須ですので、この分量を不足させるべきではないという事です。酵素が不足すると、消化不良や代謝不良を起こすので、そうならないためにも、食べすぎ(酵素の無駄使い)は厳禁なのです。
肉食中心の生活
肉中心の食生活は、動物性脂肪を過剰に摂取すると大腸内に悪玉菌が増加して、腸内環境は悪化します。さらに悪玉菌は、硫化水素やアンモニア、アミンなどの毒素を発生させて「発がん物質」を作り出します。また、肉中心の食生活を続けていると体内で脂肪を消化・吸収するために肝臓が胆汁を過剰に分泌するようになります。そうなると、肝臓に戻れない余分な胆汁が大腸に流れ込み、がんを更に促進する二次胆汁酸(発がん促進物質)を生み出すのです。つまり、発がん物質と発がん促進物質がダブルで揃うので、更に大腸がんのリスクが高まります。現に癌になった人の腸を調べると、悪玉菌が優勢になっているといいます。
断食(ファスティング)をすると、食事をしていないのにこんなに沢山の便が出るのかと驚くほどです。これが出て行ってくれると、とても体の調子が良くなるというのが万病一元論です。また、腸が健康だと『幸せホルモン』と呼ばれるセロトニンを出すため、実際に気分も幸せになるのです。
幸せを司るホルモン

『幸せホルモン』と呼ばれるセロトニンは、実際はホルモンではなく自律神経を整える『神経伝達物質』です。セロトニンがしっかり分泌されていると、自律神経のバランスが整い精神が安定します。気分の浮き沈みが少なくなることにより、ストレスやイライラも軽減されます。このように腸は「第二の脳」とも呼ばれており、このように気分の良し悪しにも大きな影響を及ぼすのです。
なお、セロトニンのおよそ90%は腸内で生成されているため、幸せホルモンを増やすためには、腸内環境を積極的に整えることが大切なのです。
ところで、日本語で便の事を『お通じ』と言いますが、これは体からのお便りという意味で、成績表のようなものです。腸がキレイになると、それに応じて『お通じ』が変化しますので、一つの目安になります。
腸がきれいになる前兆の便
・バサバサの腸壁に詰まっていたような便がでる
・ドロドロのコールタールのような便がでる
腸がきれいな人の便
・バナナのようなつるんとした綺麗な一本の大きな便
・時間がかからないで、一気に出る
・残便感が無い
・便に匂いがない
・紙につかない(便がつるっと出て、お尻がキレイ)
・体臭がなくなる
免疫を司る
腸内には免疫の大多数が存在し、腸の調子が良いと免疫力が上がります。私たちは口から食物を摂り入れ、その食物が胃や腸を通り、肛門から便となって排出されます。また口からは食物以外にも、さまざまな細菌やウイルスが侵入してきます。腸はこれらの外敵にさらされる機会が多いため、免疫機能が備わっています。免疫に関わる細胞の6割以上は腸に存在し、腸は体内で最大の免疫器官と言われています。つまり、腸の健康を保つ事が、免疫力をアップするコツと言えます。
なお、腸が健康な状態とは、腸内細菌のバランスが整った状態です。コレラ、ペスト、インフルエンザ、最近ではコロナなどの菌性の病気に関しても、免疫が強ければ退治できます。常に自分の免疫を高める意識が大切です。食事療法をしても、まだ病気が多いのは、万病一元論にある腸を綺麗にする視点が必要です。
まとめ

今後、ますます長寿社会に向かうにあたって、健康的に生きていくことは皆が望むところだと思います。方や、毎日の生活でストレス、暴飲暴食、寝不足などで体の老化が進み、思うような老後を迎えるのが難しい社会でもあります。毎日明るく、健康で、肌もきれいで、若々しくて、自立した生活を送ることは、自分たちも幸せでいられて、結果として周りの幸せにもつながります。
食生活を正した後、血圧が下がったとか、糖尿が良くなった等の報告を良く聞きますが、万病一元論の考え方で言うと、腸内の環境が良くなったことが理由です。また、漢方的な視点で言う万病一元論では、汚れた血である瘀血(おけつ)が万病に関連するため、病気だけでなく膝や腰痛が治ることにも関係しています。腸が綺麗になるだけで、手足の冷え、シミ、そばかす、クマ、くすみ、ニキビ、イボなどの肌荒れ、生理痛、無月経、子宮筋腫などの婦人科系トラブルなど様々な症状に良いとされています。
とても魅力的な考え方で、やる価値はありますので、ぜひ腸活を試してみて下さい!
まさに万病に効くんだニャ―

自然で健康的な、スローライフスタイルを志すライター。人生を愉しみ、明るく健康的に過ごす事を目標に、イタリアンスタイルの健康、生活情報を発信しています。
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